WEKO3
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この発言は一九九二年十月三〇日、大阪営林局が主催した「東山国有林の風\n致施業に関する懇談会」の席で、委員の一人である白幡からの意見である。そ\nの意見の興味深さは、風致というのは森林の多様な機能を含んだ幅のあるもの\nとの見方であり、風致施業が風致景観施業ばかりではないと指摘している点に\nある。したがって、風致施業のなかに景観以外の他の機能に期待した施業法も\nあると示唆しているのである。たしかに森林の風致体験は五感で得られる総合\n的体験である。さらに、同懇談会委員の森本は、「やっぱり生き物の環境をも\nっと考えて行こうという事じゃないかと思うわけです。〜中略〜、単に景観ポ\nテンシャルだけに止まらず、もう少し積極的な利用というものが、なされなけ\nればならないんじゃないかと思うんです。〜中略〜、自然教育とか環境教育と\nかは、これからの時代背景のキーポイントになるんじゃないかと考えていま\nす。」と発言している(\n2)\n。この懇談会は東山の森林の風致とその施業のあり方に\nとどまらず、森林の風致と風致施業のあり方全般におよぶ論議が諸委員の間で\n展開され、まさに森林の多面的機能を重視した取り扱いを議論する今日の趨勢\nを先取りしたものとしてじつに貴重な場であったと評価される。\n ここで考えさせられるのは、風致施業を風致景観施業と狭義に理解すること\nへの反省である。しかし、和辻がアリストテレスの言葉として、﹇人は本来知\nることを欲するものであるが、その証拠の一つとして感覚を喜ぶということを\nあげることができる。感覚が何かのために役立つというばかりでない、感覚を\nそれ自身のために喜ぶ、中でも視覚を喜ぶ。すなわち行為するために見るとい\nうだけではなくして、行為を全然考えない時でも「見る」ということそれ自身\nが何よりもありがたいのである。これは「見ること」が他のあらゆる感覚に\n優ってものを知らしめ、ものの区別を明らかにするからである﹈、と論考して\nいることに注目したい(\n3)\n。そして、森林の公益的機能への国民の期待が高まる\nなか、森林へ目を向けさせることを意識した報告もされるようになり、堀は人\nが外界を知覚するとき、その80%程度は視覚情報に頼っていると記し、豊かな\n森林景観の提供の必要性を述べ(\n4)\n、黒川・内田は森林公園のアメニティの評価\nに視覚が重要な役割を果たしていることを報告している(\n5)\n。ここに明らかなよ\nうに五感のなかで視覚が優位な感覚であるとの認識に疑いはない。その線上に\nは視覚が美しさを感じとる役割ばかりでなく、見ることによって視覚以外の感\n覚が覚醒されることも含まれている。したがって、風致施業が風致景観施業を\n核に据え遂行してゆく方向性は妥当であると論者は考える。さらに風致景観施\n業の遂行は、田村が一九一九年に「森林の美観に就ては、いつでも外よりの美\n観、内での美観内よりの美観に着目せねばならぬ。」と指摘したように、森林\nの風致は視点場の位置から林外景観・林内景観と大別しそれぞれの視点位置か\nら検討されるものであることが報告されてきた(\n6)\n〜\n(9)\n。\n 論者は森林の風致と施業に関心をよせ、これまで調査・研究を進め発表し、\n森林美学の役割を、「どのような美を付加価値として森林に表現してゆくのか\nを考究することであり、その中心課題は、①森林(天然生林・人工林・二次林)を\n35\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\n美的に取り扱う施業方法、いわゆる森林風致施業を計画実行すること。②森林\nレクリエーションに供される森林のありよう(林分構造)とレクリエーション\n施設およびその配置を計画すること、の二点に収束される。」と定義した。そ\nの上で、森林の多面的機能への評価がますます高まってきた今日、森林を知っ\nてもらうためにはまず森林へ誘うことであり、森林の風致の向上のため美し\nい・心地好いと感じてもらえる林相(顔)ごとの林分構造へ誘導することの重\n要性を提案してきた(\n10)\n〜\n(29)\n。そこで、森林施業計画にかかわる立場であれば誰も\nが容易に適用・実行できる森林風致施業指標の構築をめざし、二〇〇〇年頃、\n森林の風致体験に大きく作用している林内の明るさと見通しを林分構造の一因\n子である枝下高を使って表すことのできる枝下空間量を着想し、二〇〇三年に\n「森林風致施業のための指標に関する考察」と題し日本林学会大会でその仮説\nと算出式を発表した(\n30)\n。ただ、はたして枝下空間量という一つの指標で林内の\n明るさと見通しを一体して表わしているのであろうかと物足りなさは持ってい\nた。その後、多くの林相・立地で林分調査を重ねデータの蓄積を進めつつ、そ\nの過程で枝下空間量は林内の垂直方向への開放を示す指標であることに気づ\nき、水平方向への開放を示す指標の開発の必要性を痛感していた。そこで、調\n査区(コドラート)内の胸高直径合計を調査区の一辺で除した数値が林内の水平\n方向への開放の指標となると仮定しこれを胸高直径指数と名づけた(\n31)\n。そし\nて、森林風致施業指標﹇枝下空間量(㎥/本・100㎡)={平均枝下高(m) -林床\n植生高(m)}×( 10m× 10m)÷本数、胸高直径指数=胸高直径合計(m)÷ 10m﹈\nと林内の明るさと見通しとの関係を検証するため、調査林分ごとに明るさは照\n度計で林内・林外で測定し相対照度として表し、見通しは地上60㎝に設定した\n白紙(タテ100㎝×ヨコ60㎝)の見える距離として測定し、データを蓄積していっ\nた(\n32)\n(33)\n。さらに、森林風致施業指標と林内の明るさと見通し距離との関係を林\n内の風致評価として示すためのアンケート調査を行ない、その分析結果を\n二〇〇八年に発表した(\n34)\n。アンケート調査は、スギ壮齢人工林の無間伐林分お\nよび間伐林分、スギ高齢人工林、ヒノキ壮齢人工林の無間伐林分および間伐林\n分、ヒノキ高齢人工林、アカマツ壮齢二次林および高齢二次林の無保育林分お\nよび保育林分、コナラ・クヌギ壮齢二次林の無保育林分および保育林分(間\n伐・刈り出し)、コジイ壮齢二次林および高齢二次林の無保育林分および択伐林\n分、の計18林分・相観植生(林相)8タイプで行なった。これは現在身近に見\nて接することのできる林相である針葉\n樹人工林・落葉広葉樹林・常緑広葉樹\n林を保育の有無別に調査したもので、\n相似する林相のデータとの比較を行な\nうことを念頭とし森林風致施業指標の\n適用をするものとしての選定である。\nまた、アンケート調査は8回、被験者\nは大学生そして社会人計24名( 10歳代\nから50歳代)に参加してもらい、風致\n評価は各林分で見通し・明るさ・開放\n感の3項目それぞれ10段階とし、高い\n(良い)= 10〜7、普通=6〜5、やや\n悪い=4〜3、悪い=2〜1とし判断\nしてもらった。各林分で3項目の平均\n値を算出し、高い(良い)= 10〜8、普\n通=6〜5、悪い=3〜1を風致評価\nとし、森林風致施業指標との関係を統\n計処理した。\n その結果、針葉樹林・広葉樹林とも\nに見通しの良さ・明るさ・開放感など\nバランスがとれ風致評価が高かったの\nは見通し距離約40m前後・相対照度約\n20%を\n満\n足\nす\nる\n林\n分\nで\nあ\nり\n、\n普\n通\nの\n評\n価は見通し距離20〜30m前後・相対照\n度10〜20%を満足する林分であった。\n評価の低い林分は林相に関係なく見通\nし距離約5m以下・相対照度約5%未\n満の林分であることを報告した。しか\nし、林相別に高い風致評価を見ると、\n針葉樹林(スギ壮高齢人工林)で見通し\n距離約30m以上・相対照度約10%以\n表1 風致評価・相観植生別にみた林内空間表現因子(23 より)\n(100 ㎡当たり)\n評価相観見通し距離\nm\n相対照度\n%\n空の見える\n割合 %\n枝下高\n m\n林床植生本数枝下空間\n量 ㎥/本\n胸高直径指数\n高さ m 被度 %\n高(8以上) 落葉広葉樹林45 19 15 10.5 0.2 5 6 175 0.149\n普(5・6) 針葉樹林6 ~ 37 9 ~ 20 15 ~ 35 7.5 ~ 14 0.3 ~ 4 10 ~ 70 5 ~ 14 46 ~ 274 0.168 ~ 0.24\n落葉広葉樹林21 ~ 30 3 ~ 7 10 9 ~ 11.5 0.2 ~ 1.5 15 ~ 20 6 ~ 9 100 ~ 192 0.156 ~ 0.17\n常緑広葉樹林23 14 30 12 3 20 3 400 0.117\n低(3以下) 針葉樹林3 ~ 8 1 ~ 2 5 ~ 10 6.5 ~ 11.5 0.5 ~ 2.5 20 ~ 70 10 ~ 21 27 ~ 90 0.199 ~ 0.282\n落葉広葉樹林2 2 10 8 2.5 90 16 34 0.348\n常緑広葉樹林11 2 5 15 3 40 3 400 0.126\n36\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\n上、落葉広葉樹林(コナラ壮齢二次林)で見通し距離約20m以上・相対照度約\n20%以\n上\nの\n林\n分\nで\nあ\nる\nこ\nと\nが\n知\nら\nれ\nた\n(\n表\n1)。\nこ\nれ\nら\nか\nら\n、\n針\n葉\n樹\n林\nで\nは\nど\nち\nらかというと見通し距離を優先して、落葉広葉樹林では明るさを優先して、林\n内の風致の好ましさを評価している傾向のあることが読み取られた。また、林\n床植生の被度と高さは胸高直径指数に直接反映していた。さらに林内風致評価\nのアンケート調査によって、捨て伐り間伐され林内に置かれた林木や、下刈\nり・除伐され巻き落しされて等高線上に積まれた枝条の存在は林内風致の評価\nを低く判断した理由として挙げられており、林内整備にあって留意すべき指摘\n事項であった(図1、2)。また、林内の風致評価に反映する因子として、見通\nし距離には本数と枝下高・林床植生の状態が挙げられ、明るさには空の見える\n割合・本数・枝下高が挙げられ、空の見える割合には地搔きや下刈りなどによ\nる林床植生の状態による見通しの良し悪しが挙げられ、さらに、水の流れ・\n風・歩道の整備状態・太い樹の存在・植樹が林内風致の判断評価項目となって\nいることを知ることができた(\n34)\n。\n これまでに林床植生の状態と林内レクリエーション活動については藤本や李\nによって報告されており(\n35)\n(36)\n、林床植生の育成と管理に関する報告は多くの研\n究者が発表してきた(\n37)\n〜\n(44)\n。一方、四手井は「ヨーロッパの人たちは、森林の場\n合、森林の中へ入って、中から自然をながめると、心が安まるとか、楽しいと\nか、そういう意味で森林の中を歩くのです。中から森林を見るというのが、一\n般のヨーロッパ人です。〜中略〜、ところが、日本人は大体森林の中へは入り\nません。〜中略〜、山を歩くとか、森を中から見るということはない。外から\n見て、遠山霞というのですか、遠くの山を見て山を楽しむ人はいる」と、森林\nとの接し方の違いを指摘している(\n45)\n。実際のところ林床植生の生育が旺盛なわ\nが国では、遊歩道(散策路)や林道をはずれ休憩・昼食をとることや写真撮影\nなど林内に一時的に立ち入ることはあっても、稀といってよい。すなわち、森\n林へ誘うためには散策路や登山道あるいは林道などから見える林内景観をいか\nに美しく心地好いと感じ見てもらうように林内の整備をするのか、そして沿道\nの景観整備をするのかが大切となる。\n 今回、これまでに得られた分析結果や先行研究結果を踏まえ、二〇〇〇年よ\nり蓄積してきた針葉樹単層林83林分(表2)、広葉樹単層林49林分(表3)、竹林\n11林\n分\n(\n表\n4)そ\nし\nて\n複\n層\n林\n40林\n分\n(\n表\n5)、\n計\n183林\n分\nの\n毎\n木\n調\n査\nデ\nー\nタ\nに\n基\nづ\n図2 下刈り・除伐木の巻き落としの林分は風致評価が低い。\nビニール覆いはナラ枯れ木の薬剤散布駆除。\n(大文字山・コナラ二次林)\n図1 捨て伐り間伐の林分は風致評価が低い。\n(銀閣寺国有林・スギ人工林)\n37\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\nき、樹種別・林齢別に整理した森林風致施業指標の分析を行った(表2〜5は巻\n末に示す)。これまで林齢を若齢林= 30年生未満、壮齢林= 30〜70年生未満、高\n齢林= 70年生以上と設定し森林風致施業指標値を示してきたが、わが国の人工\n林の齢級配置(1齢級は5年を括約)をみると6齢級以下= 22.2%、7〜10齢\n級= 56.8%、11〜14齢級15.8%、15〜19齢級5.0%という状況にあること(46) 、お\nよび、これまでの調査した多くの林分の齢級実態を勘案した結果から、若齢林\n= 30年生未満、壮齢林①= 30〜50年生未満、壮齢林②= 50〜70年生未満、高齢\n林①= 70〜100年生未満、高齢林②= 100年生以上と設定することとし、実用に供\nした森林風致施業指標値の提示となるように区分した。\n一、単層林の分析結果\n(一)針葉樹単層林の森林風致施業指標(表2:巻末)\n①スギ人工林(図3、4)\n 27林分で毎木調査を実施している。高齢林②は供試数が2件であるが、枝下\n空間量は1\n9\n6\n3㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.085 で見通し距離50m以上で\nあるが相対照度9%とやや暗いものであった。が、当林分のスギは250年生を超\nえる樹齢であり、その林相からは美しさばかりでなく崇高さ・森厳さといった\n森林の風致を体感している。そして、同じ高齢林②の樹齢100年生を超える林分\nは枝下空間量940㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.123 で見通し距離40m・相対照\n度19%を確保し高い風致評価と判断された。高齢林①では、枝下空間量は807㎥\n/本・100㎡、胸高直径指数0.159 で見通し距離41m・相対照度29%を確保し高\nい風致評価を得ると判断され、枝下空間量150㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n0.324 の林分は見通し距離50m以上・相対照度9%であり風致評価は普通と判\n断されたが、これは本数が12本/ 100㎡と間伐遅れから林内の明るさの確保がさ\nれていないことの反映であった。したがって、高齢林①②では枝下空間量が300\n〜500㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.190 以下かつ林床植生高0.3m以下の林分構\n造であれば高い林内風致評価が得られると判断できる。\n 壮齢林②では、枝下空間量は278㎥/本・100㎡、胸高直径指数約0.187、林床\n植生高0.3mで見通し距離37m・相対照度9%でアンケート調査により高い風致\n評価を得ており、枝下空間量150㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.229、林床植生\n図4 スギ人工林・壮齢林①(福井県高浜町:\n鋸谷式間伐・枝下空間量190 ㎥ / 本・\n100 ㎡、胸高直径指数0.186、林床植生高\n0.3m、見通し距離23m・相対照度21%)\n図3 スギ人工林森林風致施業指標\n38\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\n高0.5mの林分は見通し距離24m・相対照度18%であり普通の風致評価であっ\nた。壮齢林①は、枝下空間量は140㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.259、林床植\n生高0.2mで見通し距離32m・相対照度10%で高い風致評価を得ていた。また、\n枝下空間量190㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.186、林床植生高0.3mで見通し距\n離23m・相対照度21%と林内の見通し・明るさともに確保され普通以上の風致\n評価が期待できた。そして、枝下空間量103㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n0.356、林床植生高0.6mの林分は見通し距離18m・相対照度9%で普通の風致\n評価を得ていた。\n 風致評価が低い林分は、枝下空間量が約150㎥/本・100㎡以上あっても胸高直\n径指数約0.28 以上の林分や、枝下空間量約50㎥/本・100㎡以下で胸高直径指\n数0.2以上の林分構造では見通し距離20m以上確保されているにもかかわらず、\n相対照度5%未満と林内の明るさが確保されていない林分であった。\n②ヒノキ林(天然生林・サワラ林含む)(図5、6)\n 35林分で毎木調査を実施している(うち2林分がサワラ)。高齢林②は供試数が\n4件であるが、枝下空間量は338㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.135、林床植生\n高は0.1mで見通し距離36m・相対照度18%を確保し高い風致評価と判断され\nた。高齢林①では、枝下空間量は185㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.248、林床\n植生高は0.2mで見通し距離50m以上・相対照度9%を確保していた林分と、枝\n下空間量458㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.128、林床植生高0.2m、および枝下\n空間量157㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.159、林床植生無しの林分で見通し距\n離50m以上・相対照度35%を確保していた3林分が高い風致評価と判断され\nた。この3林分とも本数は4本/ 100㎡と少なく、スギ高齢林①でも本数3本/\n100㎡\nの\n林\n分\nで\n胸\n高\n直\n径\n指\n数\n約\n0.160・\n見\n通\nし\n距\n離\n41m・\n相\n対\n照\n度\n29%と\n林\n内\nの\n明るさが確保され高い風致評価を得ていたことと共通していた。\n 壮齢林②では、枝下空間量は212㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.164、林床植\n生高0.3mで見通し距離26m・相対照度9%を確保しており普通の風致評価と判\n断された。壮齢林①でこれまでの調査からは普通の風致評価が得られる林分は\n確認されなかった。それは、見通し距離20mは確保されているのであるが、相\n対照度がどれも5%未満と暗いためである。ただし林齢に関係なく、林床植生\n高は0.2〜0.3m以下に抑えられていないと高い風致は得られないことはスギ人工\n図6 ヒノキ人工林・壮齢林①(京都府亀岡市: 図5 ヒノキ林・サワラ林森林風致施業指標\n枝下空間量58 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径\n指数0.32、林床植0.8m、見通し距離\n19m・相対照度5%未満)\n39\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\n林と共通していた。\n③アカマツ二次林(クロマツ林含む)(図7、8)\n \n9林分で毎木調査を実施している(うち3林分がクロマツ林分)。マツ枯れに\nよって高齢林分が少ないこと、および二〇〇三年に調査を実行した林分であり\n見通し距離と相対照度の実測を行っていない林分がある。実測を行えた壮齢林\n①をみると、枝下空間量48㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.252、林床植生高0.3\nmで見通し距離42m・相対照度14%を確保し、アンケート調査で普通の風致評\n価であった。\n 見通し距離と相対照度の実測を行っていない京都御苑・大阪万博記念公園で\nの調査からは、クロマツ高齢林②をみると、枝下空間量690㎥/本・100㎡、胸高\n直径指数0.066 であり高い風致評価が期待でき、アカマツ高齢林①をみると、\n枝下空間量625㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.043 であり高い風致評価が期待で\nき、クロマツ高齢林①で、枝下空間量472㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.07 で\nあり高い風致評価が期待できる。\n④カラマツ人工林(図9、10)\n 毎木調査を6林分で実施しているが、見通し距離および照度調査はできてい\nない。スギ人工林・ヒノキ人工林・アカマツ人工林の調査結果から、50年生\n図8 アカマツ人工林・壮齢林①(大阪万博記念\n公園:枝下空間量48 ㎥/本・100 ㎡、胸\n高直径指数0.252、林床植生高0.3m、見\n通し距離42m・相対照度14%)\n図9 カラマツ人工林森林風致施業指標\n図7 アカマツ林・クロマツ林森林風致施業指標\n40\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\n(壮齢林②)以上の林分で枝下空間量は約150㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約\n0.130 以下であれば見通し距離20m前後・相対照度10〜20%が確保され林内の\n風致評価が高いと予想された。壮齢林①でも枝下空間量は約150㎥/本・100㎡以\n上、胸高直径指数が約0.150 であれば見通し距離20m前後・相対照度約10%は\n確保され普通の林内の風致評価が得られると予想される。しかし先述したよう\nに、捨て伐り間伐林分では上記の森林風致施業指標値が満足されていても高い\n風致評価にはつながらない。\n⑤その他の針葉樹人工林\n モミ人工林が2林分、スラッシュマツ人工林・テーダマツ人工林・アカエゾ\nマツ人工林・ラクウショウ人工林を各1林分で毎木調査する機会を得ている。\n供試林分が少ないことから多くを記すことはひかえるが、モミ人工林とアカエ\nゾマツ人工林はヒノキ人工林の指標値が、スラッシュマツ人工林・テーダマツ\n人工林はアカマツ人工林の指標値が、ラクウショウ人工林はカラマツ人工林の\n指標値が近似するものと樹形特性より想定された。ただ調査時に、モミ林では\n枝下高を4〜5m以上確保できていないと林内は暗く、快い風致の体感は難し\nいと感じている。\n(二)広葉樹単層林の森林風致施業指標(表3:巻末)\n①コナラ二次林・クヌギ二次林(図11、12)\n 高齢林①1林分、壮齢林②5林分、壮齢林① 14林分、計20林分(うちクヌギ林\nが7林分)で毎木調査を実施している。高齢林①は枝下空間量338㎥/本・100\n㎡、胸高直径指数0.132 であり高い風致評価が期待できたのであるが、林床植\n生の繁茂で見通しも明るさも確保できないことから風致評価は低いと判断され\nた。壮齢林②では枝下空間量172㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.149 で見通し距\n離45m・相対照度19%が確保され林内の風致評価は高いとアンケート結果を得\nていた。しかし、壮齢林②の枝下空間量195㎥/本・100㎡、胸高直径指数約\n0.156 の林分では見通し距離30m確保されていたが相対照度5%未満と暗いた\nめアンケートの風致評価は低かった。前者は傾斜地、後者は平地という立地の\n関係から太陽光の入射の違いによるものと判断された。壮齢林①の林分では枝\n図10 カラマツ人工林・若齢林(長野県・康耀堂美術館:枝下空\n間量29 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.1、林床植生高0.1m)\n図11 コナラ林・クヌギ林森林風致施業指標\n41\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\n下空間量60㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.131 では見通し距離37m・相対照度\n18%を\n確\n保\nし\n、\n高\nい\n風\n致\n評\n価\nの\n予\n想\nさ\nれ\nる\n林\n分\n構\n造\nで\nあ\nっ\nた\n。\n②ケヤキ林など(図13、14)\n 大阪万博記念公園で植栽された代表的樹林であるケヤキ林3林分と、スズカ\nケノキ林1林分・アメリカフウ林・アカシデ- アラカシ混交林を各1林分で毎\n木調査を実施している。そして、長野県内でシラカンバ二次林を1林分調査し\nている。ただ、これら林分では見通し距離と照度調査は実施できていない。壮\n齢林②の森林風致施業指標は枝下空間量183〜297㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n0.09 〜0.132 であり、壮齢林①の森林風致施業指標は枝下空間量108〜190㎥/\n本・100㎡、胸高直径指数0.13 〜0.18 であった。園内の林分は見通しと明るさ\nの確保が意識されている点に共通性があることを調査時に感じていた。それ\nは、壮齢林②は壮齢林①の森林風致施業指標値の違いとして枝下空間量は約1.2\n倍以上であるが、胸高直径指数は大差がない林分構造となって現れていた。そ\nして、シラカンバ二次林の若齢林の森林風致施業指標を示すと、枝下空間量108\n図14 ケヤキ林・壮齢林②(大阪万博記念公園:枝下空間量図13 落葉広葉樹林(ケヤキ林など)森林風致施業指標\n183 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.126、林床植生高0.1m)\n 良い緑陰となっている。\n図12 コナラ二次林・壮齢林①(横浜市寺家町:落ち葉掻き)\n42\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\n㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.135 であった。これら森林風致施業値をコナラ\n林の指標値との比較から、普通ないし高い風致評価が期待できるものと判断さ\nれた。\n③ソメイヨシノなどサクラ林とウメ林(図15)\n サクラ林2林分・ウメ林1林分を大阪万博記念公園・京都御苑で毎木調査を\n実施している。ソメイヨシノ林の森林風致施業指標は枝下空間量82㎥/本・100\n㎡、胸高直径指数0.131 で見通し距離50m以上・相対照度27%が確保され高い\n林内風致の評価と予想できる林分構造にあった。御苑ではサクラ類とヤマモミ\nジが混植された林分であり、枝下空間量245㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.076\nであり、見通し距離20m以上・相対照度10%前後は確保できると予測される林\n分構造であった。\n ウメ林は枝下高を葉の着いている枝の平均高さ3.8mと設定し、枝下空間量42\n㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.135 であった。ただ、枝は地上1mあたりから\n分岐した樹形を呈しており、見通し距離は10m前後・相対照度5〜10%と予測\nされ、季節感ただよう視覚と香りを楽しむ風趣の富む花期を除き、林内風致の\n評価はけっして高い評価が得られる林分構造とは判断されないものであった。\n④コジイ二次林(スダジイ林含む)(図16、17)\n \n7林分(うちスダジイ林1林分)で毎木調査を実施している。高齢林①の森林\n風致施業指標をみると、枝下空間量400㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.126 の林\n分では樹高3mの常緑低木の林床植生が成育し見通し距離は11m・相対照度\n5%未満であり林内風致のアンケート調査は低い評価の林分構造であった。択\n伐が実行された直後の壮齢林②は樹高1.5mの常緑低木の林床植生が被度10%成\n育した状態であったが、枝下空間量213㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.133 とな\nり見通し距離は23m・相対照度12%が確保され、アンケート調査で普通の林内\n風致を得ていた。ただ、択伐したことで林冠に穴があき直接降雨が林床に当た\n図15 ウメ園・若齢林(京都御苑:枝下空間量42 ㎥/本・100 ㎡、\n胸高直径指数0.135、林床植生高0.2m)\n図16 コジイ林・スダジイ林森林風致施業指標\n43\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\nることとなり、勾配が約20度のため表面侵食の発生を招く状態も観察され注意\nすべきである。\n このように、コジイ二次林の高齢林①・壮齢林②はうっ蒼とした林冠を形成\nし、枝下高10m近く確保され枝下空間量約150〜400㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n約0.13 〜0.27 で、ヒサカキ・サカキなど常緑低木の林床植生の成育も少ない\n状態であり、見通し距離は20m前後確保されるものの、相対照度5%前後と暗\nい林分構造を呈していた。\n⑤クスノキ林など常緑広葉樹林(図18〜20)\n クスノキ5林分、アラカシ2林分、マテバシイ1林分、ソヨゴ2林分、アラ\nカシ・マテバシイなどの混交林2林分を京都御苑および大阪万博記念公園で毎\n木調査している。大阪万博記念公園は造成されて40年あまりであり壮齢林①が\n多い。そして、樹種による体感される風致の味わいの違いもさることながら、\n樹種特性である樹形とくに枝が枯れずに地上近くまで着葉するアラカシやマテ\nバシイなどは公園の外縁を構成する林分に、そして枝が枯れ上がりやすいクス\n図19 クスノキ林・壮齢林②(大阪万博記念公園:枝下空間量図18 常緑広葉樹林(クス林など)森林風致施業指標\n344 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.105、林床植生高0.2m)\n見通しは利くがうす暗さを感じる林分構造。\n図17 コジイ二次林・壮齢林②択伐(京都・法然院上方:枝下空\n間量213 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.133、林床植生\n高1.5m、見通し距離23m・相対照度12%)\n 表面侵食が発生。\n44\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\nノキは園内に位置する林分にと、期待する機能の使い分けを考慮した配植とし\nていることが読み取られ、それは林分構造の違いとなり森林風致施業指標値の\n違いとなって現われていた。\n 京都御苑のクスノキ高齢林②をみると枝下空間量730㎥/本・100㎡、胸高直径\n指数0.135 であり、コジイ林での実測値から見通し距離20m以上・相対照度\n10%前\n後\nは\n確\n保\nさ\nれ\nる\nと\n予\n測\nさ\nれ\n、\nう\nっ\n蒼\nと\nし\nな\nが\nら\nも\n見\n通\nし\nの\n利\nく\n風\n致\n評\n価\nも普通と判断される林分構造を形成していた。そして、大阪万博記念公園は、\n園内の壮齢林②をみると枝下空間量344㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.105、壮\n齢林①は枝下空間量159〜380㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.062 〜0.108 であり、\n同じく見通し距離20m以上・相対照度10%前後は確保されると予測され風致評\n価も普通と判断される林分構造となっていた。しかし、外縁の壮齢林①はうっ\n蒼とした林分構造で枝下空間量23〜100㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.204 〜\n0.286 で、見通し距離10m前後・相対照度5%未満そして風致評価は低いと予\n想できた。\n ソヨゴ二次林の若齢林は林床植生を除伐されて、枝下空間量32㎥/本・100\n㎡、胸高直径指数0.183 を示し、見通し距離34m・相対照度13%が確保された\n明るい林分であり、林内の風致評価は普通と判断された。\n(三)竹林の森林風致施業指標(図21〜23、表4:巻末)\n モウソウチク林10林分、マダケ林1林分を調査している。モウソウチク林の\nなかで特筆されるのは京都市西山地域や長岡京市・大山崎町そして京田辺市な\nどで行われているタケノコを生産するために仕立てられているモウソウチク林\nの存在である。その竹林の特徴は、11月上旬頃から稲刈り後のワラを厚さ2\n㎝ほどで林床に敷きつめ、12月頃から隣接する15年から20年間保育してきた竹\n林を小型重機で削り、その表土をワラ敷きの上に客土として厚さ数㎝で均して\nゆく。その林分は翌年4月中旬、発生してきたタケノコの何本かは親竹として\n育成し、伸長している最中に揺すって梢端を折る先止め(シンドメ)作業が行\nわれ、樹高(稈長)を7〜10m、枝下高4〜5m、枝節が10〜17段残る樹形と\nした疎林仕立ての独特な竹林景観を呈している。\n図20 アラカシ・クスノキなど混交林・壮齢林①(大阪万博記念\n公園:枝下空間量37 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.21、\n林床植生高0.2m)\n 見通しの利かないうす暗い林分構造。\n図21 モウソウチク林・マダケ林森林風致施業指標\n45\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\n 付) 先止めされない樹形は、樹高(稈長) 15〜17m、枝下高7〜11m、枝節\n30±5\n段\nの\n樹\n形\nで\nあ\nる\n。\n タケノコ生産林の森林風致施業指標は枝下空間量20〜32㎥/本・100㎡、胸高\n直径指数0.19 〜0.40 に仕立てられていた。一般のタケノコを採取し竹材を収\n穫している管理されたモウソウチク林は枝下空間量8〜23㎥/本・100㎡、胸高\n直径指数0.352 〜0.96 であった。そして、無管理なモウソウチク林は枝下空間\n量4〜11㎥/本・100㎡、胸高直径指数1.128 〜1.568 の林分構造であった。\n 森林風致施業指標値と見通し距離・相対照度および風致評価との関係をみる\nと、タケノコ生産林分は枝下空間量21㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.19 で相\n対照度16%が記録されていることから、見通し距離20m以上そして高い風致評\n価と予想された。一般の管理のモウソウチク林の枝下空間量17㎥/本・100㎡、\n胸高直径指数0.352、見通し距離22m・相対照度13%を記録した林分は普通の\n風致評価が予想された。枝下空間量8㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.50 の林\n分は見通し距離14m・相対照度7%が実測され暗いため風致評価は低いと予想\nできた。無管理なモウソウチク林の枝下空間量5㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n1.568 は見通し距離1m・相対照度5%未満であり、風致評価は低いと予想で\nきた。\n二、複層林の分析結果(表5:巻末)\n 複層林の成立する必要十分条件は下木が成育できる林内の明るさの確保であ\nる。それは光の要求度が違う下木となる樹種ごとに林分構造も違うということ\nを示唆している。林内照度や上木の本数管理に関して、藤森は10%を割ると下\n木の成長は停滞し形質劣化を起こす。10%を下回れば上木は伐採しなければな\nらない。したがって、最終間伐後の林内相対照度は最低30%あることが必要で\nあると報告している。安藤は林内の相対照度が20%に近づいたら上木を間伐す\nると報告し、岡林はヒノキ下層木の照度不足等による枯損は相対照度が10%以\n下で多発し、15%程度以上になると回避され、そして10年以上にわたって相対\n照度20%以上確保するためにはha当たり立木本数を300本程度( 250〜300本・55年\n生)にする必要があると報告している(\n47)\n(48)\n(49)\n。論者はこれまでの複層林の調査か\nら、上木と下木全体の樹冠疎密度が80%を超えると相対照度が10%未満となる\n図23 モウソウチク放置林(大山崎町:枝下空\n間量5 ㎥ / 本・100 ㎡、胸高直径指数\n1.568、見通し距離1m・相対照度5%未満)\n図22 モウソウチク林(大山崎町:枝下空間量21 ㎥/本・100 ㎡、\n胸高直径指数0.19、相対照度16%)\n ワラ敷き後の土敷き作業。独特な竹林景観が形成されてい\nく。\n46\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\nこと。上木と下木の林齢差は20年以上の長期二段林が適当であること。下木の\n梢が上木の枝下に達したならば上木樹冠内の下木の間伐あるいは上木の枝打ち\nまたは伐採が必要となり、上木の枝下高と下木の樹高との開き(差)が重要で\nあること。下木が低木性花木の場合は林内の相対照度が20%以下とならないよ\nうに上木の間伐あるいは枝打ちが必要で、上木の枝下高は花木樹高の2m以上\n高くとること。野生動物による食害や傷害対策が必要であること、などを報告\nした。かつ、複層林における森林風致施業指標(枝下空間量・胸高直径指数)を上\n木・中木・下木それぞれ階層別の算出式として提案した(\n50)\n。しかし、その算出\nは煩雑で明解さに欠け分かりにくさがあった。その後の調査の過程で、枝下空\n間量の算出式は上木の平均枝下高および全木の平均枝下高の2つでそれぞれ算\n出することの方が分かりやすく合理的であると考えるにいたった(三段林の場合\nは、上木に中木を加算したものとして算出する)。このことによって単層林の森林風\n致施業指標値との比較が容易となり、下木の植栽時の明るさの確保をするため\nの上木の択伐(間伐)や枝打ちの設定がしやすくなる。\n(1)上木の枝下空間量\n {上木平均枝下高(m)│林床植生高(m)}×( 10m× 10m)÷(上木本数)\n(2)全木の枝下空間量\n {全木平均枝下高(m)│林床植生高(m)}×( 10m× 10m)÷(上木本数+下木\n本数)\n(3)上木の胸高直径指数\n 上木の胸高直径合計(m)÷ 10(m)\n(4)全木の胸高直径指数\n 全木の胸高直径合計(m)÷ 10(m)\n これまでの調査林分は、スギを上木とする8林分、ヒノキ11林分、アカマツ\n14林\n分\n、\nそ\nし\nて\n、\nカ\nラ\nマ\nツ\nと\nモ\nミ\nの\n各\n1\n林\n分\n、\nコ\nナ\nラ\n2\n林\n分\n、\nイ\nロ\nハ\nモ\nミ\nジ\n・\nシラカンバ・ハルニレの各1林分、計40林分である。分析は見通し距離・相対\n照度の測定を実施したスギ、ヒノキ、アカマツそしてコナラを上木とする各林\n分とした。\n(一)上木スギ複層林(図24、25)\n スギ単層林で相対照度が約20%以上となっていたのは、壮齢林①の枝下空間\n量190㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約0.19 以下が、壮齢林②の枝下空間量\n150㎥/本\n・\n100㎡\n以\n上\n、\n胸\n高\n直\n径\n指\n数\n約\n0.23 以\n下\nが\n、\n高\n齢\n林\n①\nの\n枝\n下\n空\n間\n量\n300\n㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約0.15 以下の林分が該当していた。\n 今回、複層林で林床の相対照度が20%を超えていた林分は、宮崎県綾町で調\n査した壮齢林①のスギ―カヤ二段林の2林分であった。一つは見通し距離38\nm・相対照度20%が確保され、その上木の森林風致施業指標は枝下空間量124㎥\n/本・100㎡、胸高直径指数0.208 であり、全木の森林風致施業指標は枝下空間\n量31㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.208 であり、高い林内風致の評価が期待さ\nれる林分構造であった。もう一林分は見通し距離7m・相対照度36%が確保さ\nれ、上木の枝下空間量367㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.123 で、全木の枝下空\n間量29㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.178 の林分構造であり、見通し距離が短\nいのは下木の枝下高が低いためで高い林内風致の評価が得られる林分構造では\nなかった。また、相対照度14%を記録した高齢林②のスギ―ヒノキ二段林も、\n図24 スギ複層林(全木)の森林風致施業指標\n47\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\n上木の枝下空間量467㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.162 であったが、下木の枝\n下高が1.5mと低いため全木の枝下空間量24㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.261\nで、見通し距離10mと短く心地よい林内風致感は得られにくいと判断された。\n(二)上木ヒノキ複層林(図26、27)\n ヒノキ単層林で見通し距離20m以上・相対照度約20%以上となっていたの\nは、高齢林①の枝下空間量約160㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約0.16 以下\nの林分と、高齢林②の枝下空間量約330㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約\n0.135 以下の林分が該当していた。\n 今回、林床の相対照度が20%を超えていた林分は調査されていない。5年生\nの下木が植栽されたばかりの高齢林②で上木の森林風致施業指標が枝下空間量\n354㎥/本\n・\n100㎡\n、\n胸\n高\n直\n径\n指\n数\n0.135、\n全\n木\nで\n枝\n下\n空\n間\n量\n109㎥/本\n・\n100㎡\n、\n胸\n高直径指数0.135 が、見通し距離36m・相対照度18%を記録しており、高い風\n致評価が得られるものと予想された。しかし、天然生林で上木が樹齢250年生を\n超えた高齢林②は枝下空間量650㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.189、全木で枝\n下空間量24㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.322 であり、見通しと明るさの実測\nはしていないが、下木の繁茂から見通しは利かず、明るさも5%未満と判断で\n図27 ヒノキ―ヒノキ二段林(筑波山国有林:上木=枝下空間量図26 ヒノキ複層林(全木)森林風致施業指標\n475 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.188、全木=枝下空\n間量22 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.326、見通し距\n離7m・相対照度5%未満)\n図25 スギ―ヒノキ二段林(京都市・貴船:上木=枝下\n空間量467 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.162、\n全木=枝下空間量24 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径\n指数0.261、見通し距離10m・相対照度14%)\n48\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\nきる林分であった。しかし、美しさばかりではない森厳さのある情趣の風致を\n体感できる林分であった。\n ヒノキ―コバノミツバツツジ二段林の高齢林①は上木の森林風致施業指標が\n枝下空間量98㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.225、全木で枝下空間量29㎥/\n本・100㎡、胸高直径指数0.273 であり見通し距離23m・相対照度12%を記録\nし、普通の風致評価が得られると予想された。\n 高齢林②で上木の枝下空間量約120〜500㎥/本・100㎡、胸高直径指数約0.115\n〜0.19、全木で枝下空間量約30〜75㎥/本・100㎡、胸高直径指数約0.17 〜0.25\nの林分は、見通し距離20m確保されていたが相対照度5%未満であり、風致評\n価は低いと予想された。\n(三)上木アカマツ複層林(図28、29)\n アカマツ林の成立は森林から大径木の伐採に始まり、薪炭や落葉落枝の採取\nが休むことなく続けられたことにより、痩せ地となり乾燥にも強いアカマツが\n優占する二次林が形成されたとされる(\n51)\n。調査した林分は高木層にアカマツを\n主とし、中木層にコナラ・コシアブラ・ヤマウルシ・ソヨゴ・クロバイなど\nが、そして低木層にコバノミツバツツジ・モチツツジなどのツツジ類・ネジ\nキ・ナツハゼ・ヒサカキ・サカキなどが成育する疎林の多段林型を呈する林分\n構造である。近年、里山の放置状態の雑木林や竹林を都市林として整備する活\n動が行政と市民による協働で間伐作業やツツジ類(コバノミツバツツジやモチツツ\nジ)など低木性花木の育成をはかるための刈り出し作業そして竹林の整備作業\nが行われ、それら活動が定着してきていることを論者は里山に関する資料のレ\nビューとして報告している(\n52)\n。\n アカマツ単層林で相対照度20%を越える林分の記録はなかったが、壮齢林①\nで枝下空間量48㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.252 の林分で見通し距離42m・\n相対照度14%が記録されていた。そこで、スギ林・ヒノキ林の単層林の調査を\nふまえ、枝下空間量150㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数0.18 以下であれば相\n対照度20%を確保できるものと予想できた。\n 相対照度20%を記録した複層林は、壮齢林①のアカマツ―コバノミツバツツ\nジ二段林の上木の森林風致施業指標の枝下空間量195㎥/本・100㎡、胸高直径指\n数0.126、全木をみると枝下空間量27㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.204 であ\n図29 アカマツ―モチツツジ二段林(京都造形芸術大学:上木= 図28 アカマツ複層林(全木)の森林風致施業指標\n枝下空間量143 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.168、\n全木=枝下空間量52 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.24、\n見通し距離6m・相対照度18%):年1 回の地掻き作業\n49\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\nり、見通し距離20m・相対照度28%を確保しており、普通の林内風致評価の林\n分構造と判断された。そして、壮齢林②で上木の枝下空間量143㎥/本・100㎡、\n胸高直径指数0.168、全木をみると枝下空間量52㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n0.24 で見通し距離6m・相対照度18%を確保しており、同じく壮齢林②で上木\nの枝下空間量390㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.096、全木をみると枝下空間量\n48㎥/本\n・\n100㎡\n、\n胸\n高\n直\n径\n指\n数\n0.196 で\n見\n通\nし\n距\n離\n5m・\n相\n対\n照\n度\n15%で\nあ\nっ\nた。高齢林①も上木の枝下空間量116㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.117、全木\nをみると枝下空間量15㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.244 で見通し距離3m・\n相対照度5%未満であり、同じく高齢林①の上木の枝下空間量210㎥/本・100\n㎡、胸高直径指数0.109、全木をみると枝下空間量22㎥/本・100㎡、胸高直径\n指数0.282 で見通し距離8m・相対照度5%未満であった。\n しかし、高齢林②で上木の枝下空間量2880 ㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n0.037 で、全木の枝下空間量92㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.19 の林分構造で\n見通し距離26m・相対照度5%未満であった。このように上木が針葉樹の複層\n林で見通し・明るさ共に確保される林分は少ないことが知られた。\n(四)上木コナラ複層林(図30)\n コナラ単層林では林床植生が下刈り管理されていると壮齢林①②という林齢\nの違いによる森林風致施業指標の較差は小さいこと、そして、枝下空間量が約\n60㎥/本\n・\n100㎡\n以\n上\n・\n胸\n高\n直\n径\n指\n数\nが\n約\n0.150 以\n下\nで\nあ\nれ\nば\n見\n通\nし\n距\n離\n20〜\n30\nm・相対照度10〜20%が確保され高い風致評価の期待できる林相となることが\nわかっている。\n 複層林での調査は壮齢林①のコナラ―コバノミツバツツジ二段林で調査でき\nた2林分である。上木の森林風致施業指標をみると枝下空間量71㎥/本・100\n㎡、胸高直径指数0.09、そして全木で枝下空間量9㎥/本・100㎡、胸高直径指\n数0.218 であり、見通し距離24m、相対照度36%を記録し高い風致評価を期待\nしたが、林内に伐採された枝条を巻き落とし積まれており、アンケート調査の\n林内風致の評価は普通と判断されていた。\n 壮齢林②のコナラ―ヒノキ二段林は、上木の森林風致施業指標をみると枝下\n空間量96㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.133、全木をみると枝下空間量14㎥/\n本・100㎡、胸高直径指数0.217 であり、見通し距離約20m、相対照度10%前後\n図31 コナラ―コバノミツバツツジ二段林(京都市・宝ヶ池:上\n木=枝下空間量71 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.09、\n全木=枝下空間量9 ㎥/本・100 ㎡、胸高直径指数0.218、\n見通し距離24m・相対照度36%)\n 刈り出し作業後の状態。\n図30 コナラ複層林(全木)の森林風致施業指標\n50\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\nと予測され、普通の林内風致の評価と予想された。\n 今回、落葉広葉樹を上木とする複層林はイロハモミジ、シラカンバ、ハルニ\nレの林分で調査しているのであるが、見通しと明るさの調査は実施できていな\nい。\n三、考察\n(一)単層林(表6)\n①スギ人工林\n 壮齢林②と高齢林①では枝下空間量約300㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約\n0.185、林床植生高0.3m以下であれば高い風致評価が得られており、森林風致\n施業指標の値に大差はないことが知られた。むしろ、高い風致評価を得ていた\n壮齢林②の枝下空間量278㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.187 と、壮齢林①の枝\n下空間量140㎥/本・100㎡、胸高直径指数0259 と、森林風致施業指標に差のあ\nることがわかり、高齢林①と壮齢林②とで枝下空間量較差は約150㎥/本・100\n㎡、胸高直径指数較差は約0.075 の開きがあることが知られた。これは本数密\n度の違いそして樹高成長による枝下高の違いが森林風致施業指標値の差となっ\nて現れているからである。ただし、林床植生高は0.2〜0.3m以下に抑えられてい\nないと高い風致評価は得られないことが共通していた。好まれる森林の姿が見\n通しと明るさ・開放性など確保した林分構造をもつとして考案した枝下空間量\nと胸高直径指数の森林風致施業指標は、樹齢・林齢のエイジングにより醸し出\nされる崇高さ・森厳さ・神々しさなどの趣きまでは伝えきれないことから、林\n相の醸し出す情趣としてふさわしい風致表現である形容詞を調査時に付記して\nおく必要性のあることがわかった。\n②ヒノキ林\n 高齢林①②では枝下空間量が約350㎥/本・100㎡、胸高直径指数約0.135、か\nつ林床植生高0.2〜0.3m以下の林分構造であれば高い林内風致評価が得られるこ\nとが知られた。スギ高齢人工林は枯れ枝の自然落下から枝下高が高くなる傾向\nから枝下空間量が500㎥/本・100㎡を超える値を得るに対し、ヒノキ林は枯れ枝\nが落下しにくい樹種特性なので約160〜350㎥/本・100㎡と低めであることが知ら\nれた。そして、見通し距離20mは確保されているのであるが相対照度が5%未\n満と暗く、明るさを確保するには間伐を実行し、本数約7本/ 100㎡の胸高直径\n指数0.150 前後の林分構造に誘導する必要があると判断された。\n 壮齢林②では、高い風致評価を得るためには、枝下空間量は150㎥/本・100㎡\n以上、胸高直径指数約0.130、林床植生高0.3m以下の林分構造に誘導しなけれ\nば見通し距離30m以上・相対照度10%以上の確保はできないとスギ人工林の調\n査結果から判断された。\n 壮齢林①も普通の風致評価を得るためには、枝下空間量約100㎥/本・100㎡以\n上、胸高直径指数約0.17 以下でないと見通し距離20m以上、相対照度10%前\n後の林内の明るさは確保できないと判断された。\n③アカマツ二次林(クロマツ林含む)\n 京都御苑の高齢林①②で全木の枝下空間量600㎥/本・100㎡以上、胸高直径指\n数約0.07 以下、林床植生高0.3mの林分構造で、見通し距離20m以上・相対照\n度10〜20%を確保できる高い風致評価が期待される。しかし、山地・里山の二\n次林では低木層の成育があり、スギ・ヒノキ人工林と同じく壮齢林①②では下\n刈りを実行し枝下空間量100〜150㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.15 〜0.2 の林分\n構造へ誘導しないと、見通し距離20m前後・相対照度約10%を確保し普通の風\n致評価は期待できないと判断された。\n④カラマツ人工林\n 壮齢林①で枝下空間量は100〜150㎥/本・100㎡、胸高直径指数が0.150 〜0.2\nとすることで、見通し距離20m前後・相対照度約10%が確保される林分構造と\nなり、普通の風致評価が得られると判断された。\n⑤コナラ二次林・クヌギ二次林\n コナラ・クヌギ林の壮齢林①と壮齢林②との林齢の違いによる森林風致施業\n指標値較差は小さく、下刈り管理されていれば、枝下空間量が約60㎥/本・100\n㎡以上、胸高直径指数が約0.150 以下の林分構造であれば見通し距離20〜30\nm・相対照度10〜20%が確保され高い風致評価が得られる林分構造へ誘導でき\nることがわかった。さらに、平地林では太陽光の確保を図るため、枝下空間量\n51\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\n表6 単層林の風致評価と森林風致施業指標森林風致施業指標と本数は100 ㎡当たりの数値\n林 相林 齢\n風致評価=高い風致評価=普通\n備 考\n枝下空間量 ㎥/本胸高直径指数枝下空間量 ㎥/本胸高直径指数\nス ギ高齢林② 940 0.123\n高齢林① 807 0.159 150 0.324\n壮齢林② 278 0.187 150 0.229\n壮齢林① 140 0.259 190 0.186\n若齢林\nヒノキ高齢林② 338 0.135\n高齢林① 157 0.159 98 0.228\n壮齢林② 212 0.164\n壮齢林① * 169 * 0.176 *下刈りによって\n若齢林\nアカマツ・クロマツ高齢林② * 690 * 0.066\n高齢林① *472 * 0.07\n壮齢林② * 138 *0.124\n壮齢林① 48 0.252\n若齢林\nカラマツ高齢林②\n高齢林① * 225 * 0.112\n壮齢林② * 102 * 0.138\n壮齢林① * 190 * 0.144 *捨て伐り間伐材の整理によって\n若齢林\nコナラ・クヌギ高齢林②\n高齢林① * 338 * 0.132 *下刈りによって\n壮齢林② 172 0.149\n壮齢林① 60 0.131 138 0.108\n若齢林\nケヤキなど落葉広葉樹高齢林②\n高齢林①\n壮齢林② * 183 * 0.126\n壮齢林① *190 * 0.13\n若齢林*108 * 0.135\nソメイヨシノ高齢林②\n高齢林①\n壮齢林②\n壮齢林① 82 0.131\n若齢林\nコジイ高齢林②\n高齢林① *400 * 0.126 *下刈りによって\n壮齢林② 213 0.133\n壮齢林①\n若齢林\nクスノキ高齢林②\n高齢林① * 730 * 0.135\n壮齢林② * 344 * 0.105\n壮齢林① * 380 * 0.108\n若齢林\nソヨゴ若齢林32 0.183\n竹林(モウソウチク) 21 0.19 17 0.352\n*値は実測値から予想された風致評価\n52\n論文[森林の風致とその客観的評価法 ― 林相別にみた森林風致施業指標 ―]髙梨武彦\nは50〜100㎥/本・100㎡、胸高直径指数約0.130 以下の林分構造に誘導する必要\nのあることがわかった。\n また、高齢林①の枝下空間量338㎥/本・100㎡、胸高直径指数が0.132 の林分\nは、下刈りによって見通し距離20〜30m・相対照度10〜20%が確保され高い風\n致評価が得られると期待できる。\n⑥ケヤキ林など\n ケヤキ林やスズカケノキ林・アメリカフウ林の壮齢林①②の枝下空間量約200 ㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約0.13 以下の林分構造は見通し距離20m以\n上・相対照度10%以上と予測でき普通ないし高い風致評価が期待できる。\n ソメイヨシノ林は枝下空間量82㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.131 で見通し\n距離50m以上・相対照度27%が確保され高い林内風致の評価が得られると判断\nされ、シラカンバ二次林の若齢林の枝下空間量108㎥/本・100㎡、胸高直径指数\n0.135 の林分構造では普通ないし高い風致評価と期待できる。\n⑦コジイ二次林(スダジイ林含む)\n うっ蒼とする照葉樹林を代表する林相である。択伐を実行した壮齢林②は枝\n下空間量213㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.133 に誘導され、見通し距離23m・\n相対照度12%を確保する林分構造となった。しかし、アンケート調査では風致\n評価は普通であり心地よい風致とは評価されていなかった。さらに、傾斜地の\n林地では胸高直径指数0.1以下とするような択伐は表面侵食を誘発する恐れが高\nいこともわかり注意すべきである。したがって、照葉樹林のうっ蒼とする林外\n景観としての価値を評価すべきであることを示していた。\n⑧クスノキ林など常緑広葉樹林\n 樹種の特性を活かした森林の機能を期待する仕立てとなっており、公園外縁\nの樹林は枝下空間量100㎥/本・100㎡以下、胸高直径指数0.2以上とうっ蒼とさ\nせ、園内の樹林は枝下空間量約160㎥/本・100㎡以上、胸高直径指数約0.1で見通\nしが利く林分構造となっていた。園内の森林風致施業指標は外縁の枝下空間量\nの1.5〜2倍以上・胸高直径指数は0.4〜0.5倍となっていた。それは、公園などで\n夏場の緑陰を味わう林相と評価することがふさわしいと判断された。\n⑨竹林の森林風致施業指標\n 高い風致評価が期待されたのはタケノコ生産林であり、その森林風致施業指\n標の枝下空間量20〜32㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.19 〜0.4 は一般の管理竹\n林の枝下空間量で約1.4〜2.5倍、胸高直径指数は約1/4〜1/2に仕立てら\nれ、無管理竹林の枝下空間量の約3〜6倍、胸高直径指数約1/8〜1/4に\n仕立てられていた。そして、一般の管理竹林の森林風致施業指標値(枝下空間\n量8〜23㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.352 〜0.96)は無管理竹林の枝下空間量約1.5〜\n2倍、胸高直径指数約1/3〜2/5に仕立てられており、普通な風致評価が\n期待できる。\n(二)複層林(表7)\n①上木スギ複層林\n 調査から判明することは上木の森林風致施業指標値からは十分に見通しも明\nるさも確保される状況にあるが、実際、見通し距離は確保されるが明るさの確\n保がされにくい状況であることがわかった。すなわち、上木の林齢にかかわり\nなく林分全体での森林風致施業指標で枝下空間量130㎥/本・100㎡以上、胸高直\n径指数約0.2以下とすることで見通し距離20m以上・相対照度20%が満足される\nことがわかり、その林分は下木が5〜10年生以下の林分、あるいは下木が上木\nに近い大きさにまで成長し上木・下木ともに枝打ちと間伐の保育された林分で\nあった。そして、下木の樹高が低く上木の枝下(幹)が見える二段林は、美し\nい林外景観を呈していた。三段林は林縁から20m近辺ほどまでの陽光が入射す\nる範囲で成立していたが、下木の成長が見込まれるためには常に管理されてい\nないと林分構造の維持が難しい作業種であることがわかった。\n②上木ヒノキ複層林\n 林内の相対照度が20%に近づいたら上木を間伐する、ヒノキ下層木の照度不\n足等による枯損は相対照度が10%以下で多発し、15%程度以上になると回避さ\nれるとの報告を参考とすると、これまでの調査では林床の相対照度が20%を超\nえていた林分は調査されず、15%を超えていた高齢林②の上木の森林風致施業\n指標が枝下空間量354㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.135、全木で枝下空間量109\n㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.135、見通し距離36m・相対照度18%を記録し\n53\n京都造形芸術大学紀要[GENESIS]第16号\nた1林分にすぎなかった。このことから、択伐直後は林内の光環境は良いが、\n適宜に保育が行われないと林内照度の維持確保は難しいことを知らせている。\n調査をさせていただいた愛媛県の篤林家からは材価の下落が著しく行いたい保\n育作業もできない経営の厳しさをヒアリングしており、現在の林産業界の停滞\nが重くのしかかっている現状をうかがうことができた。\n③上木アカマツ複層林\n 低木性花木の開花促進には林床相対照度30%前後が要求される。壮齢林①の\nアカマツ―コバノミツバツツジ二段林で、上木の森林風致施業指標の枝下空間\n量195㎥/本・100㎡、胸高直径指数約0.126、全木の枝下空間量27㎥/本・100\n㎡、胸高直径指数0.204 の林分構造で見通し距離20m・相対照度28%を確保さ\nれていたことから、林内光環境を維持するため今後も継続して定期的な除伐・\n下刈り作業が求められる。\n 壮齢林②で上木の枝下空間量390㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.096、全木を\nみると枝下空間量48㎥/本・100㎡、胸高直径指数0.196 で、見通し距離5m・\n相対照度15%であったことから、下刈りによって見通し確保と明るさの改善が\n期待できる"}]}, "item_10002_version_type_43": {"attribute_name": "著者版フラグ", "attribute_value_mlt": [{"subitem_version_resource": "http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85", "subitem_version_type": "VoR"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorAffiliations": [{"affiliationNameIdentifiers": [{"affiliationNameIdentifier": "", "affiliationNameIdentifierScheme": "ISNI", "affiliationNameIdentifierURI": "http://www.isni.org/isni/"}], "affiliationNames": [{"affiliationName": "", "affiliationNameLang": "ja"}]}], "creatorNames": [{"creatorName": "高梨, 武彦", "creatorNameLang": ""}, {"creatorName": "高梨, 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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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PDF (8.8 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2013-07-31 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 森林の風致とその客観的評価法―林相別にみた森林風致施業指標 ― | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | Forest landscape and its objestive evaluation method - forest landscape management guidelins considered by forest - | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
著者 |
高梨, 武彦
× 高梨, 武彦 |
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著者別名 |
Takanasi, Takehiko
× Takanasi, Takehiko |
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書誌情報 |
京都造形芸術大学紀要 en : Genesis 号 16, p. 34-62, 発行日 2012-10 |
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出版者 | ||||||
出版者 | 京都造形芸術大学 | |||||
書誌レコードID | ||||||
値 | AN10448053 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |